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前途多難な労働契約法

 9月15日に、今後の労働契約法制の在り方に関する研究会の最終報告が提出された。同研究会では、「労働契約に関する公正・透明な民事上のルールを定める新たな法律(労働契約法)の制定が必要だ」と結論を出した。この結論を受け、厚生労働大臣は9月28日、労働政策審議会に対して今後の労働契約法制の在り方について諮問し、同審議会労働条件分科会で、平成18年7月の中間答申取りまとめに向けて審議が開始された。
 この間に、労働契約法制定の実現の前にクリアすべき様々な難問が横たわっていることが明らかになってきた。

 
成文法の必要性

 多様化する雇用形態とそれに伴って増えてきた個別的労働紛争の回避・解決のために、労働契約の分野で行為規範となる成文法が必要であることは衆目の一致するところである。研究会の報告の目指すところも労働基準法の民事的側面を取り出し、従来の判例法を集大成してこのニーズをかなえる新法を作るということである。この試みは、概ね好意的に受け取られられてきた。
 
 
労使双方の反発

 しかし、元々経営者団体は、労働契約法の存在自体が、人事の裁量範囲の制約につながると考えて、労働契約法制定に消極的だった。さらに、今回の研究会の最終報告を受けて、労働契約法の制定自体は望んでいた労働組合側も、その内容に反発を強めている。特に、従来より反対していた解雇の金銭解決制度と「変更解約告知」の導入に加え労使委員会の重視に反発を強めている。
 労働政策審議会は、公益代表、労働者代表、使用者代表で構成されているので、今後激しい議論が予想される。しかも対立の構図は、「法制定に熱心な行政と公益代表」VS「労働契約法に反発を強める労働者代表と使用者代表」という変則タッグマッチの様相を呈している。

 労働契約法の新しい提案内容

 今回の最終報告には、以下の4点の新たな提案内容が盛り込まれている。
 
1 労使委員会の重視
2 就業規則による労働条件の変更のための新方式
3 雇用継続型契約変更制度
4 解雇の金銭解決制度

 労働基準法の労働者の過半数代表の選出方法などがあいまいで形骸化しやすいことを補強し、労働条件や就業規則の決定・変更などに労働者側の当事者として活用するために、労使委員会制度を導入していくことが提案されている。しかし、この労使委員会の重視が労働組合の軽視につながるとして組合側の強い反発を生んでいることは上記に紹介した。
 さらに、労働法専門家の間からは、この労働契約法上の労使委員会と労働基準法上の労使委員会の位置づけの矛盾について指摘する声が上がっている。労働基準法上の労使委員会は裁量労働制など労働時間の基準緩和のために非管理監督者から構成されるが、労働契約法の民事的側面は当然管理監督者にも及ぶ。この二つをどう整合させるのかも審議会の今後の課題である。また、この労働基準法上の労使委員会を拡大し活用することの背景には、厚生労働省労働基準局の所掌を確保しておきたい省益の発想を指摘する声もある。この労使委員会の発想からどれだけ脱却できるかが、労働契約法そのものの実現の鍵となっている。
 雇用継続型契約変更制度は、経営者が労働者に労働条件の低下か解雇かの選択を迫り、労働者側は、勤続を続けながら労働条件の低下について争うことを可能にする制度で「変更解約告知」とも呼ばれる。労働条件について争いながら勤務を続けるというのは、日本人のメンタリティーに馴染まないのではないかという意見が強いので、法制化できるかは不透明である。しかし、日本人のメンタリティーといわれているものも最近変わってきているので、意外と労働審判制との組み合わせで根付いてしまうかもしれない。
 解雇の金銭解決制度は、平成15年の労働基準法改正では、解決のための金額基準が定まらず流れてしまい、今回の労働契約法に持ち込まれてきた経緯がある。労・使が対立するテーマである。しかし、現実には、不毛な職場復帰よりも、金銭解決で決着する例の方が多く、金額の基準さえ詰まれば、法制化される可能性はある。

(2005/11/14)

情報提供:アルファ コンサルティング オフィス
 小島 史明

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