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「産業人メンタルヘルス白書」(2005年版) 

 財団法人社会経済生産性本部 メンタルヘルス研究所より、「産業人メンタルヘルス白書」(2005年版)が発行された。この白書には、類書にみられない独自の視点からの提言があるので紹介させていただく。 

 
残業対策とメンタルヘルスが背反する場合

 長時間労働が過重労働となり、精神の健康への悪影響がうつ病として現れ、やがて過労自殺の原因になるということは多く論じられ、残業がメンタルヘルスにマイナスであることは誰もが認めるところとなっている。しかし、逆に残業削減対策のようなものが、メンタルヘルス対策として有効と言えるのか? メンタルヘルス研究所長小田晋氏の第1部論文が問いかけている。
 残業が増えれば、(1)生活習慣を乱す、特に睡眠時間が減る傾向にある、(2)JMI(産業人精神健康調査票)の心身の健康尺度は特に「疲労」が顕著に悪化する、(3)職場尺度では、「仕事への負担感のなさ」が仕事への負担感のある方向にふれ、残業時間との単純相関は最も大きい、(4)家族との関係は残業時間が60時間以上になると悪化する、と言えるが、アドバイスを求める人は残業時間のより少ないグループにも多い。さらに、残業時間の短縮のためペナルティーを課し、職場の雰囲気を悪化させる形で行うと、長時間残業群に比して短時間残業群で精神的不健康者が見られる場合もあると、指摘している。
 調査研究編のまとめでも長時間労働そのものは好ましくないが、無理に減らすように圧力をかけるとさらに良くない結果があらわれることが示されている。残業対策が個人を責めることにつながり、それがメンタルヘルスに逆効果であることがあるのだ。
 
 
メンタルヘルスの他の要因

 長時間労働だけが、メンタルヘルスに影響する要因でないとすると、他に職場のどのような要素が影響するのか。同じく、小田晋氏は以下のように指摘する。
「従業員の精神健康に最も強く影響するのが雇用の安定と企業の経営の安定であることが分かっている。」
 このような観点からは、成果主義賃金がメンタルヘルスに与える圧力、特に評価と仕事の割り振りの不公平感が心身の健康の悪影響を与えていることが指摘されている。

 有効な残業削減への提案

 従来の長時間労働対策は、サービス残業の取締りに見られるようなコスト的圧力を企業にかけるか、裁量労働制の導入のような法的抜け道を模索することなどで、労働時間そのものを短くする効果的な対策はなかなか見つけられなかった。これに対してこの白書では、残業削減策に結びつく面白い調査結果が紹介されている。
 従業員各人の仕事の範囲と責任が明確になっている職場では、残業時間も短く精神健康上の不調者も少ないというのだ。逆に責任の範囲の不明慮な職場では、残業時間が長くなっている。この調査結果は、従業員の責任を明確にする仕事の設計というヒントを与えてくれている。

 この白書の語るところをまとめると、労働時間の長短がフィジカルな健康へ与える悪影響は直接的で明瞭だが、メンタルな面に与える影響は、労働時間が短ければそれで良いというほど人間の精神は単純ではなく、責任の明確化などの方が良い影響を与えるということになる。

  社会経済生産性本部

 (財)社会経済生産性本部は、(財)日本生産性本部と(社)社会経済国民会議が1994年4月1日に統合して発足した非営利法人で、労働者、使用者、学識経験者の三者の代表から構成されている。メンタルヘルス研究所は1977年に設立され、2001年から毎年「産業人メンタルヘルス白書」を刊行している。

「産業人メンタルヘルス白書」(2005年版)
http://www.js-mental.org/teigen/2005hakusyo.pdf

(2005/10/11)

情報提供:アルファ コンサルティング オフィス
 小島 史明

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