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改正高年齢者雇用安定法「定年年齢の引上げ」の実際

   昨年6月に改正された「高年齢者等の雇用の安定に関する法律」(以下「高年齢者雇用安定法」)により、企業は来年4月までに、60歳定年の制度に変更を加えることが求められている。この改正で誤解されやすい点を中心に、高年齢者雇用安定法の実際をまとめてみる。

 既に施行されている措置

 改正高年齢者雇用安定法の施行は来年4月からと思われがちだが、一般企業に関わる部分でも以下の2点は、既に平成16年12月1日より施行されている。
 (1) 事業主都合で離職する45歳以上65歳未満の労働者が希望するとき、事業主は、「求職活動支援書」を作成して、再就職を支援しなければならない。
 (2) 労働者の募集、採用で年齢制限をするときは、事業主は、合理的な理由を提示しなければならない。


定年年齢の引上げ以外の方法

 改正高年齢者雇用安定法により、平成18年4月1日から定年年齢を引上げなければならないという理解が広まっているが、実際に義務付けられる「高年齢者雇用確保措置」には、以下の3種類のパターンが認められている。
 (1) 定年の引上げ
 (2) 継続雇用制度の導入
 (3) 定年制度の廃止
 企業の動向としては、定年の引上げでなく、60歳定年制を残したまま継続雇用制度での対応が多いことが予想される。また、元来長期的雇用の慣行のない企業では、定年制度そのものを廃止する選択肢もある。

 継続雇用制度対象者の限定

継続雇用制度には、引き続き正社員として雇用する「勤務延長制度」と、いったん退職した後に雇用契約を結び直す「再雇用制度」がある。どちらの制度でも、個々の労働者に、60歳定年で退職するか否かの選択権は残るが、企業側が誰を残すか恣意的に絞り込むことは許されなくなる。この点で、希望者全員を対象とする必要があると思われがちだが、これはあくまで原則で、実際には、労使協定を結んで基準を明確にすれば、対象者の限定ができることになっている。しかも、経過措置として、労使協定締結の努力をしたが労働者側の合意を得られなかった場合には、事業主側が就業規則でこの基準を定めることができることになっている。経過措置の期間は、常時雇用する労働者数が300人超の企業の場合、平成21年3月31日までの3年間で、300人以下の企業の場合は、平成23年3月31日までの5年間である。
 さらに、この限定の基準は、恣意的なものであったり、他の法規に違反したり、公序良俗に反するものでない限り認められる。厚生労働省では、この基準について参考例は示すものの、指針やガイドラインは公表しない方針で、企業の実情に合わせて労使で自主的に決めるように求めている。
 このように、希望者全員の継続雇用という掛け声とは裏腹に、かなりの抜け道が残されている。

 継続雇用後の労働条件の変更

「勤務延長制度」の場合は、社員時の労働契約が引き続くので、労働条件についても大幅な変更はできないと考えられる。しかし、「再雇用制度」の場合は、新しく労働契約を結び直すので、不利益変更のそしり受けずに新しく労働条件を設定できる。「高齢法」でも、再雇用後の労働条件について、何も規制していない。つまり、最低賃金法や労働基準法等に抵触しない限り、事業主側にかなりのフリーハンドがあることになる。立法の趣旨に沿うかどうかは別にして、労働者が再雇用を望まないような労働条件を設定することも、形式的には法違反ではないということになる。

 措置に関わる年齢の段階的引上げ

高年齢雇用確保措置は、特別支給の老齢厚生年金(定額部分)・男子の支給開始年齢引上げスケジュールに合わせ、以下のように段階的に引上げられる。

 平成18年4月から平成19年3月まで 62歳
 平成19年4月から平成22年3月まで 63歳
 平成22年4月から平成25年3月まで 64歳
 平成25年4月から         65歳
 
 しかし、この年齢のスケジュール表は、制度上の枠組みを定めているだけであることに注意を要する。例えば、平成18年に62歳に到達する昭和19年生まれの人々の大多数は、既に、平成16年に60歳定年で退職していると考えられる。このため、このスケジュール表の1行目の62歳が適用されるのは、法施行前から自主的な継続雇用制度等により在職している場合に限られる。さらに、この制度の施行後、最初に満60歳を迎えるのは、昭和21年生まれの人々だが、彼らが退職年齢に達するのは、このスケジュール表の2行目にあたる平成21年で、63歳になった時点となる。このときに同時に彼らの定額部分の年金支給も開始される。

(2005/8/9)

情報提供:アルファ コンサルティング オフィス
 小島 史明

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