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広がる石綿による健康被害状況と法規制の現状 

 6月30日に大手機械メーカーが、工場周辺で中皮腫に罹患した住民へ見舞金を支給することを発表してから、石綿による健康被害が大きく報道されている。従来は、職場における労働安全に重点おいて捉えられていたが、より深刻な広がりを持つことが認識されてきた。

 
石綿とは

 石綿(アスベスト)は、天然の繊維状の珪酸塩鉱物だ。強度、断熱性、耐火性、電気絶縁性、耐酸性、耐アルカリ性があり、軽く加工しやすく、安価なため、建築資材をはじめ様々な用途で利用されてきた。しかし、杉花粉よりも微細な鉱物繊維という特徴は、人体には大変有害であった。石綿が微細なため粉塵となりやすく、呼吸器にとりこまれるとアスベスト肺の原因となる。さらに、その微細で繊維状の形状のため、細胞に一度突き刺さると除去が困難で、数十年経て悪性中皮腫や肺がんなどを引き起こす原因となる。
 
 
石綿規制の流れ

 日本における石綿の規制の流れは、70年代におけるWHOやILOによる石綿の発がん性の指摘を受けて、労働安全衛生法の範疇で進められてきた。
 「特定化学物質等障害予防規則」(昭和46年労働省令11号、昭和47年労働省令39号)で取扱いを規制。
 平成7年より、安全衛生法施行令16条により、発がん性の強いといわれる、角閃石系の石綿であるアモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)の製造等が禁止された。
 平成16年10月1日に同条が改正施行され、蛇紋石系のクリソタイル(白石綿)を重量の1%以上含有する石綿セメント円筒などの製品の製造等が禁止された。この規制は、原則禁止と呼ばれているが、代替が難しいとされるシール材、耐熱・絶縁版、ジョイントシート、石綿布・石綿糸などは製造が引き続き認められている。
 この原則製造禁止を受け、7月1日に施行された「石綿障害予防規則」は、従来の製造現場での「特定化学物質等障害予防規則」から、石綿規制を取り出し、既存の建築物の解体改修工事において建材の中の石綿飛散による更なる災害を防止する目的としている。「石綿障害予防規則」は、解体作業者に解体現場での対策を求めるものだが、建築物所有者にも、解体業者が充分に安全対策を取れる費用で発注するように求めている。
 7月15日に、衆議院は、「石綿の使用における安全に関する条約」(ILO162号)の締結を承認した。ILOにおいて1986年6月24日に採択されたものなので、19年遅れの批准ということになる。

 被害状況

 厚生労働省の集計では、平成15年までに、石綿による業務災害の労災補償件数は、肺がん296件、中皮腫367件の合計663件となっている。これは、補償件数で死亡件数ではないが、企業がこの間公表した死者数460人と大枠で符合している。
 そして、この背後には、企業が確認していない被害者や、被災から発症まで数十年という期間があるため因果関係がつかめないケースなどが存在する。さらに今後、発症してくる被害者の増加も予想される。
 石綿による健康被害は、製造ラインや建築サイド労働者だけでなく、製造工場の近隣、建築・解体現場の近隣、多様な製品を通じての被害など、業務災害を超えて広がっていくことも、恐れられている。

  社会的責任、賠償責任と補償

 今回大手機械メーカーが、社員や近隣住民などの被害状況を率先して公表し、因果関係を認めての賠償と切り離した形で迅速に被害者の救済のための見舞金や弔慰金を支払う決定をしたことは、企業社会的責任(CSR)のあり方として一定の評価を受けている。
 しかし、被害状況が明らかになるにつれ、企業の過失や国の不作為に賠償が提訴されることも考えられるような、広がりを見せてきている。
 業務上石綿に曝されていたことが証明されれば、企業の過失の有無を問わず労災保険による給付は受けられる。業務外の場合でも、同じように、過失責任を問わない「公害健康被害の補償等に関する法律」による補償がありうる。しかし、国は、今のところその適用に慎重と伝えられている。それに対して兵庫県副知事が、国に同法による患者の救済を要望したと報道されている。

  今後の対応策

 厚生労働省は、現在も製造が認められているシール材など製品を2008年までに全面禁止する方針を明らかにしている。
 また今後、増加が予想され、しかも有効な治療方法が見つかっていない中皮腫罹患者への業務上外を問わない救済策、解体業者が「石綿障害予防規則」を励行することを担保する方策、石綿の安全な除去技術の確立が求められている。

(2005/07/18)

情報提供:アルファ コンサルティング オフィス
 小島 史明

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